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3331おどりのば 講評会ゲストによる選評

「おどりのば」は、ジャンルにとらわれない自由な身体表現を実現する場をめざしたパフォーマンス部門です。4回目の開催となった本年は、先着順で募集された18組のアーティストが参加し、2組がスカラシップ受賞となりました。
受賞者には、2016年9月末日までの間の30日間、2階体育館を稽古場として使用していただき、3331 Arts Chiyodaを舞台に単独公演を実施する予定です。受賞者の今後の活躍にご期待ください。

<講評会実施日>
2014年9月6日(日)13:00~17:00
ゲスト審査員/伊藤千枝さん、中村茜さん

伊藤千枝 賞:立本夏山「駆け込み訴え」

選評:伊藤千枝 (振付家・演出家・ダンサー・珍しいキノコ舞踊団主宰)
今回は当日の講評だけでなく、募集方法なども考えさせていただきまして「先着順」というあまりないやり方で実施しました。とにかくやる気のある方、「これがオレの、ワタシのダンスだ!」という方、表現することへのこだわり、パワーのある方に出会うにはこの方法が1番なのではないか、と思ったからです。
その意味でも立山夏山さんのパワーはダントツでした。15分の上演でしたが30分くらいの作品をしっかり観たようでした。3331という場所や観客との関係性もしっかり捉えていたし、とにかく汗だくで1人で15分間話し続けていました。この1人パワーが今後どのように変化していくのか大変興味があります。
「広いところでやってみたいと思ってるんです。」とご本人談。その広い空間でどう1人パワーを操っていくのか、すごく楽しみです。

中村茜 賞:新聞家「正誤表一覧(2014・8・22現在)」

選評:中村茜(株式会社PRECOG代表取締役、NPO法人ドリフターズ・インターナショナル理事)
演劇、コント、大道芸、パフォーマンス、コンテンポラリーダンス、伝統芸能、そしてこれらの表現ジャンルに当てはまらないような作品まで、今年も「おどりのば」らしく様々な作品が集まりました。上演時間もそれぞれ5分から15分のものまであり、ワンアイディアをみせるものから、起承転結の展開があるものまで、ひとつの尺度では測りきれないコンペです。そんななか、何を基準に選考するかについて、はじまる前に伊藤千枝さんとお話ししたのはこんなことでした。やんちゃさ、勢い、があるもの、つまり、表現の完成度ではなく、荒っぽくても新たな表現に挑戦する姿勢を後押ししたい。また、他のコンペには通らないような表現、「おどりのば」だからこそ出てくる作品、という視点を重視しようということでした。
今回、わたしが選ばせて頂いた「新聞家」は、わたしにとって一番解釈する言葉をみつけるのが難しい作品でした。つまり、ほかの作品は既存のメソッドやストーリー展開に頼りすぎていたり、身体表現として既視感が強かったり、私小説的な表現世界のなかに留まってしまっている点で、今回重視していた「勢い」や「『おどりのば』だからこそ!でてくる作品」という言う視点、(言葉では容易に解説しがたいようなパフォーマンスとしての強さ)に欠けいたとも言えます。その点、新聞家さんのパフォーマンスは、未知の感覚に連れて行ってくれる可能性を感じました。極めて抽象的な表現でありながら、質疑の際の新聞家さんの応答は、自分たちの表現に対して意識的で、確信があるように感じられたことにも好感を持ちました。上演時間はたったの5分。三脚に設置したマイクを1台舞台上に設置し、そのマイクに向けて真っ黒な出で立ちの男性が、一語一語文節を区切る発話法を用いて話しかけます。一人称で語られているそれは意味が通じるストーリーなどではなく、細切れにされたシーンがいくつか脳裏に浮かんでは消えるような内容です。マイクと男性の存在感と発話だけでシンプルにみせる関係性なかに、観客のイメージを作用する新たな実験性を感じました。男がマイクに話しかけた次にどう展開するのか、ワンアイデアに留まるのではなく、未知の感覚に出会えるまで、表現を追求して欲しいと願っております。