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LIFE LIKE LIVE 講評会ゲストによる選評

今年で2回目を迎える音部門「LIFE LIKE LIVE」では、事前審査により選ばれた19組の参加者とゲストアーティストによる公開講評ライブを開催しました。その中で今年度のスカラシップ賞を受賞した3組の選評を掲載いたします。
受賞者は特典として、今後3331 Arts Chiyodaを舞台に単独公演を行います。
受賞者の今後の活躍にご期待ください。

<講評会実施日>
2014年9月7日(日)13:00~18:00
ゲスト審査員/岸野雄一さん、渋谷毅さん、山川冬樹さん
ゲストライブ/坂上弘さん、テニスコーツと梅田哲也さん

岸野雄一 賞:Yoshihito Nakanishi 「POWDER BOX」

選評:岸野雄一(スタディスト)
去年に比べ成長が見られました。単にプレゼンに終わらず、音楽の表現になっていました。しかもその出てきた音楽がとても面白かったというのが評価のポイントです。ガジェットの開発力としては、特にシンクのプログラミングが可能性を感じました。今後は、いかに偶発的な失敗を取り込んでいくかが鍵ですね。つまり、現状ではミスの生じにくい、キーやスケールの設定に基づいているからです。その辺のバランス感覚が、ガジェットとしての面白さ以上に、新楽器に到達できるかのキーポイントとなるでしょう。

渋谷毅 賞:ゆるアコ「はないちもんめ」

選評:渋谷毅(作曲家、ピアニスト)
3331 千代田芸術祭 2014、面白かった。普段見たり聴いたりすることができないものをたくさん経験して、ときには笑ったり、また感心したり。プロ、アマといういい方は好きではないけれど、プロのやることに面白いものはない。アマチュアの自由な発想からなにかが生まれるのではないか。どんな演奏でもそこにその人の生活(というか存在)が感じられなかったら面白くない。音楽は架空のものであっても、そういう切実さがなければただ空虚なだけだ。
ぼくが一番いいと思った「ゆるアコ」にはそんな切実さがあって、それが微笑ましく思えた。表現する技術も問題ない。そういう技術を感じさせないのがなによりよかった。活躍を期待します。

山川冬樹 賞:scscs「あひるのさんぽ」

選評:山川冬樹(ホーメイ歌手/美術家)
僕たちの生きる時代において、音楽ほど既存の権威に頼らずに行うことができる表現活動はないと思っています。そうした中で音楽のコンペティションとは、どんな意義を持ち得るのか…今回、そんなことを自問しながら、審査員を務めさせていただきました。この音部門は始まってまだ2回目とのことですが、そのぶん応募者の傾向がまだ固定化されておらず、表現形式のバリエーションがとにかく豊かで、どこに評価基準を定めるべきか悩みましたが、自分が審査員として招かれたことの意義は、音楽だけでなく、美術や舞台芸術といった他領域からの視点を併せ持つことにあるのだろうということで、山川賞は、パフォーマンスの完成度、今後の発展への期待度に加え、いわゆる従来の「音楽」の枠にとどまらない独創性、という点において最も秀でていた3人組のグループ『scscs(スクスクス)』に授与しました。彼らのパフォーマンスは、音楽と演劇との”クロスオーバー”というよりも、それらが一つに血肉化された末に、ぽろっと思いがけなくこぼれ落ちたかのような独特の抜け感と、カジュアルな洗練を有した完成度の高いものでした。またscscsの他にも、キックン★、柳本小百合さん、大久保雅基さん、不屈の卑屈、tamaruさん、久保田潤子さん+金井隆之さんらのパフォーマンスは、特に強い印象を残すものでした。賞は授与できませんでしたが、この場を借りてお名前挙げさせていただきます。